異動
夏の始めに異動した。
それまでにいた部署は毎日のようによくわからない発注を受け、それを裁き、資料を作って作って作りまくり、上司の指摘を打ち返して、部下たちの資料をチェックして、そしたらまた自分の作業に戻って…ほぼ毎日終電か朝のタクシー帰り。まだ半人前だけど、いわゆる”””バリキャリ”””である。
家に帰るとすぐお風呂に入ってすぐ寝るような生活だったから、帰りのタクシーの中では「定時とは言わないから21時くらいに帰りたい…」「仕事帰りに丸の内でウィンドウショッピングするとか、お風呂上がりにゆっくりハーゲンダッツ食べるとか、なんか漠然とキラキラなことしたい…」といつも思っていた。
そしたら異動が決まって、異動先の業務は落ち着いていた。毎日定時か、遅くても1時間程度の残業で帰れる。
定時で帰ると、毎日家でゆっくり晩御飯を食べられるし、「CMが多いなあ」とか思いながらテレビドラマをオンタイムで見れるし、本も読める。なんなら寝る前にAmazonプライムで映画を一本観ることだってできる。
でも異動して数か月が経って、そんな生活にわたしは焦りだしている。
わたしが家でゆったり過ごしている間も、同期は残業してハードな経験値を積んで成長している。
本屋で平積みされているビジネス書では、バリバリのキャリアを築いてきた優秀なおじさんたちが「若いうちから仕事で責任の伴った判断をしろ、思考停止するな、ハードな道を行け」と言っている。
人間ある程度ストレスかかっている状態の方が成長できるっていうよね…
結局わたしは、バリキャリとして凌ぎを削り続けることに疲れきっているくせに、バリキャリの土俵から降りることにはまだ覚悟が持てていなかった。
わたしが自分を追い込んで頑張っても、頑張らなくても、プライベートでわたしの周りにいる人たちはきっと変わらず仲良くしてくれるし愛してくれるだろうけど、それでも自分を追い込む環境で成長していたいと思うのは、一人前のバリキャリとしてバリバリやってる自分を見てみたいという気持ちの表れなんだろう。
とりあえずわたしはまだ自分のことを見限れないので、自分が正しいと思える方向に努力を重ねるしかない。
仕事は落ち着いているから、自分なりの方法で、何をしようかな。