ラルフローレンのお姉さん

中学一年の頃、何を着たらいいのかがわからなかった。

 

小学六年生まではポンポネットとエンジェルブルーとザラキッズとGAPで過ごし、着回しを考えたり重ね着をしてみたり、小学生なりにおしゃれを楽しんでた。

中学一年の夏になって塾の夏期講習があって、自分でも違和感を覚えつつポンポネットのTシャツを着て行ったら、教室にいる女の子は誰もポンポネットなんて着てなかった。ポンポネット着てることをからかうような嫌な子はいない環境だったけど、昔から自意識過剰なわたしは自分のことを恥ずかしいと思った。

 

冬になり、また冬季講習がある。ポンポネットを着て行けないと思ったわたしは、お母さんに頼んで松戸の伊勢丹に連れて行ってもらった。今思えば、中学生ならショッピングモールとか109とかいくらでもあるけど、中学生向けのおしゃれ服としてどんなものがあるか知らず(ファッション雑誌の存在を知らなかったか、知ってても気恥ずかしくて買えなかったかのどっちかだと思う)、小学生時代をポンポネットやエンジェルブルーで過ごしていたわたしは服を買うところで百貨店しか思いつかなかったんだと思う。

伊勢丹だから当然なんだけど、いろいろブランドを巡ってもgood girlなお洋服しかなくて、ここでgood girlなお洋服を買っても結局ポンポネットを着てるのと大差ないじゃないか、中学生向けのおしゃれな服はどこにあるんだと焦りと絶望感があった。

最後にラルフローレンに入って、ピンクとクリーム色のコットンで編まれたカーディガンと、同じような色合いのハイネックのトップス、ベージュのワイドパンツを試着した。good girl具合は多少減ったし、カジュアルな雰囲気が可愛かったけれど、そのときのわたしはこれじゃないと鏡を見ながらむくれてて、1日多感な中学生の買い物に付き合わされたお母さんもほとほと疲れ切っていた。

そしたらラルフローレンの店員のお姉さんが、お似合いですよとかいわゆる店員さんが言うセリフを一通り言ったあと、「中学生は成長で着るものが変わる時期で、自分のファッションを見失うこともあると思う。もう少し大人になればきっと好きなブランドができて、またお洋服を選ぶのが楽しくなる」というようなことを言ってくれた。

ほんとかなと思いつつ、でもその言葉にその日抱えた絶望感は少し薄くなって、結局そのとき試着した一式を買ってもらった。

 

気づけばあれから10年以上経ってて、わたしは好きなブランドができて、またそれなりにおしゃれを楽しめるようになった。松戸の伊勢丹はなくなってしまった。